走る、走る、走る!!
駅から家までの道をただひたすらに走る。
早くしないと日付が変わっちゃうよ。
あたしってこんなに持久力あったっけ?
火事場の馬鹿力ってすごいなあなんて思ったりして。
「ただいま! ってか、おじゃまします!!」
もらった合鍵で中に入ってリビングに直行。
「よしこ、おかえりー」
うわ、やっべえ。
止まったら汗がどばーって噴き出してきた。
のどがかさかさで、咳き込んでとまんねえ…。
「ケホケホッ…真希ちゃん…ゲホゲホゲホッ…
苦しい…ゲホゲホゲホゲホッ」
会って一言目がこれってのもどうかと思うけど…。
だって本当に苦しいんだもん。
息がすえないくらいに咳が出るんだよぅ。
「ちょっと、大丈夫?」
慌ててごっちんが水を持ってきてくれたんだけど、
それすら飲み込めなくて…。
非常手段で、ごっちんが口移しで飲ませてくれた。
おかげで何とか収まってきて…
「はぁ…」
深いため息をついて顔を上げたら、
ごっちんが目に涙をいっぱいためていた。
「…真希ちゃん?」
「ねえ、大丈夫? もう大丈夫?」
あら、あたしのために泣いてくれてんの?
くぅ、かわいいじゃねえか。
「うん、大丈夫。かっこわりいね、あたし」
「ううん、間に合うように走ってきてくれたんでしょう?」
「うん、そうだけど…」
「ありがとう、その気持ちだけでうれしい」
そんなことを言ってくれるごっちん。
彼女よりも友達優先! なんて言って、
こんな時間になったあたしなのにだよ?
「ねえ、笑ってよ。涙のバースディなんていやだよ?」
自分で泣かしたくせにねえ。
「うん…」
涙まみれの顔で、一生懸命笑おうとするごっちんがすごくいとおしくて
ぎゅうって抱きしめた。
「ひーちゃん」
「ん? 何?」
「ありがとう」
「ありがとう? おめでとうじゃなくて?」
「うん。19年前の今日、この世に生まれてきてくれてありがとう」
そんな言葉を腕の中で言われて
あたしも鼻の奥がつんとした。
ちくしょう、大好きだぜ。
悔しいくらいに大好きだ。