「お先に失礼しまーす!」
「あれ、よっすぃー早いねぇ」
「はい、今日は特別な日なんで!」
「デートかぁ?
みんな落ち込んでたぞ、よっすぃーに振られたって」
「別に振ってないですよ。
だって、私が恋人いるの知ってるじゃないですかぁ」
「はいはい、裕子が待ってるんでしょ。
早く行かないと、酒呑んで寝ちゃうんじゃない?」
「あ、そうだった。
それじゃ、矢口さんお疲れ様でした!」
「お疲れ〜」
そう、今日は私の誕生日。
中澤さんと付き合い始めて、初めての誕生日なんだ。
私はメンバーからもらったプレゼントを抱えて、急いで中澤さんのマンションへと向かう。
「お疲れさん」
「おじゃましまーす」
「相変わらずモテモテやな」
「そんなことないです」
「今日は早く終わって良かったなぁ」
「はい、超特急で帰って来ました。
中澤さんは疲れてないですか?ドラマとか大変だと思うんで」
「大丈夫やで」
お腹も空いてたから、話もそこそこに中澤さんの用意してくれた料理を食べた。
どれも私の好きなものばかりで、久々に食べ過ぎちゃった。
「苦しい・・・・」
「全部食べるからやないの」
「だって、折角作ってもらったから・・・」
「ははは。あんだけ食べてくれれば作った甲斐があるよ」
「へへっ」
「あ・・・あんなぁ・・・」
「どうしたんです?」
「いろいろ迷ったんやけど」
「何を?」
「プレゼント」
「いいですよ。美味しい料理食べさせてもらったし」
「そうはいかん!
何がいいのかわかんなくってな、今度一緒に買いにいこ」
眉毛を八の字にしちゃって・・・可愛いなぁ・・・。
思わず抱き締めちゃったじゃないですか。
「吉澤・・・苦しいて」
「あ、ごめんなさい。
あの、キスしていいですか?」
「そんなん聞かんでえぇよ」
緊張しながら重ねた唇。
微かに漏れる中澤さんの声に、私の頭の中が痺れてきた。
そのせいなのか、ちょっと大人になった気分だったからなのか。
私は凄い事を口に出しちゃった。
「中澤さんが欲しいです・・・」
「へっ!?」
「ダメですか・・・?」
「それじゃ・・・アタシがプレゼントって言うてるみたいやんか」
「それでもいいです」
「ふふっ・・・。
頑張ってな、ひとみ・・・」
うわっ・・・・ドキッとした・・・。
初めて名前で呼ばれたよ・・・。
私は中澤さんをベッドへ運ぶと、少しずつキスを落としていった。
でも、シャツのボタンに手を掛けて止まっちゃった。
ダメだ・・・まだできない・・・。
なんてヘタレなんだ・・・・。
「吉澤?」
「やっぱり、まだいいです・・・」
「なんやの・・・」
「今日はこうやって抱き締めてていいですか?」
「はは・・・えぇよ」
情けねぇ・・・・。
1人へこみ続ける私に、中澤さんは言ってくれた。
「焦らんでも、アタシは逃げへんよ。
ゆっくりでえぇやん、吉澤らしくいてくれんと悲しいわ」
「はひぃ・・・」
「あ、まだ言うてなかったな」
「ん・・・?」
「誕生日、おめでとう」
そういってくれたキスが1番嬉しかったかもしれない。
うん、やっぱり中澤さんが1番のプレゼントですよ。
これ以上高級なものはありません!