繁華街で遊んでたら、マネージャーから電話が来た。

「今すぐ家に帰りなさい」

「え?」

「こちらから連絡があるまで外出禁止だから」

「はい?」

「マスコミとも一切接触しないで」

「ちょっといったい、何があったんですか?」


電話口から聞こえてきたのは耳を疑うような言葉だった。
後藤真希、暴漢に襲われて意識不明の重体。

「まじっすか!」

しかも襲ったのはあたしのファンで、
しかもあたしの住むマンションのすぐ近くで。
いくら聞いても入院先を教えてくれないスタッフにぶちきれて
祐樹に電話して教えてもらって、タクシーを飛ばした。
涙は出てこなかった。
でもドキドキが止まらない。


走りこんだ病院で、煌々と輝く手術中のランプ。
刺された傷が深くって、出血が酷くって、
血管を縫う処置に時間がかかってるんだという。
ごっちんのお母さんの顔見たら、涙がぶわって溢れてきた。

「ごめんなさい…」

そんな言葉しか出てこなかった。

「来ちゃだめだって言われなかったか?」

ごっちんのスタッフに言われた。

「言われました」

「じゃあ何で来た」

「だって、ごっちんなんですよ?」

変な理由だ。
あ、そうだ。疑問を解決しとかなきゃ…。

「あの…なんでごっちんはあたしの家の近くで…」

「会いに行ったんだよ」

「え?」

「吉澤に会いに行ったんだ」

「あたしに?」

「明日、おまえの誕生日だろ?」

「あ…」

いつも言ってたっけ…
一番に祝ってあげたいって…
よっすぃ〜がどんなにモテてもそれだけは譲れないんだって…



ごっちんのお母さんがうなだれるあたしに、一通の手紙を差し出した。
元の色は何色だったのかな…
無残に赤く染まった封筒を、あたしは震える手で受け取った。

「真希がね、ずっと握ってたの」

「真希ちゃんが?」

「救急車で運ばれるまで、ずっと握り締めてたって」


『よっすぃ〜へ』

そう書いてあった。

「開けて…いいですか?」

「ええ」


『よっすぃ〜、19回目の誕生日おめでとう
 本当はね、シルバーのリングあげたかったんだけど
 一緒に買いにいきたいと思ってね。
 だから、今日は私がプレゼント♪ なーんてね。
 テレくさいな。
 いらないって言われたらどうしよう。
 ちゃんともらってね。

                真希』


ぽたぽたと手紙の上に涙が落ちた。
あたしは膝からその場にくずれ落ちた。
あたしのせいだ…。
あたしがまっすぐに家に帰ってたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに。
泣きじゃくるあたしの肩を、ごっちんのお母さんは何も言わずにやさしく抱きしめてくれた。



手術室のランプが消えた。
主治医の先生が出てくる。

「予断は許しませんが、一応の縫合は終わりました。
 今夜が山かと思います」




ICUのガラス越しに、機械につながれたごっちんを見る。
ごっちんの家族、ごっちんのスタッフ、
あたしのスタッフ
メンバー
あたしの家族
病院のスタッフ
誰がなんと言おうとあたしはそこを離れなかった。
ずっとガラスに張り付いて、ごっちんを見てた。


「入ってください」

夜が明けて朝が来て、
主治医の先生にそう言って白衣を渡された。

「え?…」

まさか、悪い結果じゃないよね?

「ご家族の方とかに聞きました。
 あなたが後藤さんにとって一番の薬のはずだからって。
 あなたが彼女の回復の特効薬になるかもしれない。
 あって言葉かけしてあげてください」



ICUの中の、チューブだらけのごっちんのそばに行く。
生きてる証の機械音が耳に付く。

「真希ちゃん?」

震える手で彼女の頬にそっと触れた。

「ねえ、早く目、覚ましてよ。
 今日、あたしの誕生日だよ?
 真希ちゃんがプレゼントなんでしょ?
 寝てちゃもらえないよ?
 だから、早く目、覚ましてよ…」



真希ちゃんが起きたらさ、いっぱいプレゼントもらうんだから。

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