夢を見た。
それは、私がまだ子供だった頃。
転んで泣いてる私を優しく慰めてくれた人。
それが裕子さんとの出会いだった。
迷惑も考えず、毎日遊びに行ったっけ。
お姉ちゃん、お姉ちゃんって。
でも、嫌な顔1つしないで遊んでくれたんだよねぇ。
いつしか、私は裕子さんに恋心を抱いた。
でも・・・ずっと言えなくて。
だって、気持ち悪いじゃん?女同士なんてさ。
だけど、裕子さんは私の気持ちに気付いてた。
きっとね、私がお姉ちゃんって言わなくなったからだと思う。
もう、お姉ちゃんって存在が嫌だったから。
不思議に思ったかもしれない、それでも優しくしてくれたんだ。
自分の気持ちを伝えられたのは、高校に入ってからだったな。
『裕子さん・・・』
『どうしたん?』
『あの・・私、裕子さんが好きです』
『ありがとな。
アタシもひとみちゃん好きやで』
『そうじゃなくて・・・』
『わかってるよ。
そういう意味で、ひとみちゃんの事好きやで』
『ほんと・・・?』
『ホンマや』
嬉しかった。
世界中に叫びたいくらい嬉しかった。
でも、そんな幸せは続かなかったんだ。
思いが叶った夜、裕子さんは仕事の為に海外へ出発した。
私は空港まで見送りに行って、なんだかちょっと不安になったんだ。
このまま会えなくなりそうな気がして・・・。
繋いだ手をなかなか離せなくて、裕子さんは苦笑してたっけ。
『じゃ、ひとみちゃん』
『ひとみって言ってください・・・』
『ん、ひとみ行ってくるな』
『早く帰ってきてくださいね』
『来週には帰るから。待っててな』
『はい・・・』
『いってきます』
『いってらっしゃい』
それが裕子さんと交わした最後の言葉だった。
次に裕子さんを見たのは・・・・。
包帯だらけの冷たい体。
あの時、我侭言って止めてれば・・・。
あの飛行機に乗らなければ、落ちる事なんてなかったのに。
ふと目が覚めて時計を見ると、丁度0時を回ったとこだった。
「裕子さん・・・誕生日おめでとう」
返ってはこない返事。
私はベッドを下りて、ベランダに出た。
寂しくないなんて嘘。
遠過ぎるよ・・・。
「ねぇ、裕子さん聞こえる?
そっち行っていいかな?
もう・・・遠距離なんて嫌だよ・・・。
裕子さんに会いたい・・・傍に行きたい・・・・」
“ 一緒に誕生日・・・お祝いしましょうね ”